製造業における品質や納期の安定を図るためには、適切な工程管理が欠かせません。近年の製造現場では、生産体制の複雑化や人手不足の影響もあり、現場ごとの状況を正確に把握し、柔軟に対応できる工程管理が求められています。この記事では、工程管理の基本とその重要性、具体的な実践方法までを詳しく解説します。
工程管理の基本とは？
製造現場において、一定の品質を維持しつつ製品づくりをスムーズに進めるためには、適切な工程管理が欠かせません。ここでは、工程管理の基本を解説します。工程管理の目的
工程管理とは、文字どおり製品づくりの進行を管理することであり、その目的は、品質が確保された依頼数量の製品を納期までに納品できるよう、現場をコントロールすることです。たとえば、製品の出来栄えを一定の水準に保つために、作業手順や設備の状態をつねに管理・改善することが求められます。
また、決められた納期に間に合わせるには、各工程の進捗状況をタイムリーに把握し、必要に応じて人員配置や作業順序を調整する必要があります。さらに、仕掛品の在庫を適切にコントロールすれば、余剰な在庫コストの削減が可能です。
生産管理・進捗管理の違い
工程管理は、製品が完成するまでの工程を管理するものであり、製造プロセスの中核部分を担います。これに対して生産管理は、原材料の調達から製品の完成・出荷まで、より広範囲な業務全体を管理し、工程管理はその一部にあたります。一方、進捗管理は、各工程が計画通り進んでいるかどうかをチェックする業務です。工程管理が求められる理由と可視化の重要性
製造現場では日々、多くの工程が並行して進行しており、その一つひとつが製品の品質や納期を守れるかに直結しています。そのため、各工程の状況を的確に把握できるようにして、管理することが重要です。情報の共有
製造や受注業務は多くのメンバーによって分担されており、それぞれのチームがどこまで進んでいるか、どこで遅れが生じているかといった情報は、全体の進行状況を理解するうえで極めて重要です。工程が可視化されることで、他チームの状況も一目で把握でき、進捗が遅れた工程にリソースを投入するといった判断が可能になります。納期やスケジュールの把握
各作業にどれだけの時間がかかっているのか、予定とのずれがどこで生じているのかを可視化することによって、無理のある計画を早期に修正でき、結果として納期の遵守につながります。スケジュールに余裕をもたせるべき工程が見えてくるため、より現実的かつ効率的な計画を立案できるでしょう。迅速なトラブル解決
生産現場では、設備の故障、材料の納入遅れ、あるいは急な仕様変更などつねにトラブルが発生しています。こうした事態に対し、現場の状況を把握できていれば、問題が大きくなる前に対応可能です。また、工程の見える化により、戻り作業を未然に防ぐこともできるでしょう。工程管理の具体的な手順と実践方法
工程管理は、製造現場の流れを滞りなく進めるために欠かせない業務です。なかでも基本となるのが「PDCAサイクル」の活用です。計画
過去のデータをもとに、現実的なスケジュールや作業内容を設定します。たとえば、これまでの製造実績や工程ごとの作業時間、不具合の発生状況といった情報を分析し、それを踏まえて無理のない計画を立案します。計画は、さまざまなツールを使用して立案しましょう。紙やホワイトボードはコストがかからず使いやすいですが、共有しづらいデメリットがあります。Excelやクラウドツールなどで立案することで、情報共有がしやすく、テンプレートを使った効率化も可能です。
実行
立てた計画に基づいて製造を進めます。作業中に発生した課題や改善の余地がある点は都度記録し、次のフェイズでしっかりと評価しましょう。計画の際に、「バーチャート工程表」や「ガントチャート工程表」を使用していれば、実施しやすく、評価も容易になるのでおすすめです。バーチャートは、作業ごとの期間を横棒で示し、全体の進捗状況を直感的に把握できる形式です。またガントチャートは、タスク同士の関連性や依存関係を視覚的に示せるため、特定の作業が遅れた場合の影響を把握しやすくなります。
評価
実行した作業が、計画通りに進行したかを確認します。遅延や不具合が発生していれば、その原因を明確にし、必要な対応策を検討します。改善
評価の結果をもとに、工程や作業の流れを見直し、より効率的な方法へとアップデートします。改善のためには、工程管理システムを導入するのもよいでしょう。作業進捗の可視化やアラート機能、アクセス権限の設定など、きめ細かな管理が可能です。これにより、紙やExcelでは実現がむずかしい、リアルタイムでの情報共有やデータの一元管理が実現し、管理精度が飛躍的に向上するでしょう。
