生産管理システムは、業務の効率化や品質向上を支える重要な仕組みです。しかし、既製品では満足できない場合や柔軟にカスタマイズしたい場合は、自作を検討してもいいかもしれません。この記事では、生産管理システムを自作するメリットや開発時に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
生産管理システムを自作する方法
生産管理システムは、受注から生産計画、在庫管理、品質管理、納期管理まで、すべての情報を一元的に把握・操作できることから、業務の効率化やトラブルの未然防止に役立ちます。こうしたシステムは市販のパッケージソフトとして多く提供されていますが、自作も可能です。ここでは、システムを自作する方法について解説します。
Excelで構築する
多くの業務用パソコンに標準搭載されており、新たなソフトを購入する必要がないため、コスト面で非常にすぐれています。また、バーコード生成用のフォントやマクロを活用することで、在庫管理がしやすくなります。さらに、マクロ機能やVBAを用いれば、作業の自動化やデータの一括処理といった高度な操作もでき、ガントチャートを取り入れれば、スケジュールや作業進捗を可視化するなど、工夫次第で多様な管理に対応可能です。一方で、大量データの取り扱いや複数人による同時編集には不向きです。
Accessを使ったシステム構築
データベース管理ソフトであるAccessは、複雑なデータの整理・検索・集計を得意としています。Accessには生産管理に役立つテンプレートもあり、データベースの構築経験がなくても比較的スムーズに設計できる場合があります。また、複数人での同時編集や大量データの処理に強く、データ入力時に誤りを検知してアラートを出す設定も可能なため、入力ミスを防ぎやすい点も魅力です。ただし、操作には一定の習熟が必要であり、学習コストはExcelよりも高くなるでしょう。
プログラミングして構築する
開発言語を使って生産管理システムを構築すれば、業務に完全にマッチした設計が可能です。とくにほかのシステムとの連携が必要なケースや既存のツールでは対応しきれない業務フローがある場合には、プログラミングによる自作がもっとも効果的といえるでしょう。しかし、この方法には高い専門性が求められ、社内に知識がなければ外部委託も必要となり、コストや時間がかかる点に注意が必要です。また、セキュリティ面や運用・保守体制の整備など、長期的な視点での管理が求められる点にも注意が必要です。
生産管理システムを自作するメリット
生産管理システムの自作には、いくつかのハードルがあるものの、多くのメリットがあります。ここでは、生産管理システムを自作する際のメリットについて解説します。導入コスト削減
ベンダーが提供する生産管理システムを導入すると、初期導入費用だけでなく、カスタマイズ費用やライセンス料、保守サポート料などの支出が必要であり、中小企業にとっては負担となりがちです。一方、自作すると社内リソースの活用で外注コスト削減が可能です。柔軟性がある
現場の業務フローや実務担当者の声を反映しながら、必要な機能だけに絞って構築できます。また、導入後の要望に合わせて項目を追加することも容易です。さらに、改善スピードの速さも自作システムの大きな魅力です。どれほど計画的にシステムを設計しても、実際に運用してみると課題が必ず出てきます。自社開発であれば、改善ニーズへスピーディーに対応できるでしょう。
生産管理システムを自作する際の注意点
システムの自作には数多くの利点がある反面、慎重に進めなければならない点も少なくありません。ここでは、生産管理システムを自作する際に注意すべきポイントについて解説します。既存システムや管理体制の見直し
導入前に、自社の業務プロセスや管理手法を洗い出しましょう。たとえば、既存の在庫管理システムや工程管理ソフトとの連携の有無、生産現場で実際に使用している帳票類の内容などを確認することで、新たに開発するシステムに必要な機能を明確化できます。扱いやすいこと
生産管理システムは、日々の業務を担う現場スタッフが実際に操作するツールであるため、使いやすさが求められます。操作性および視認性の高さが業務効率に関係するため、ユーザー目線での設計が欠かせません。属人化を防ぐ
自作担当者がひとりで構築・運用を担っていると、異動や退職した際に大きな問題となります。業務遅延のリスクを避けるため、複数名によるチームでの開発・運用体制を構築し、仕様書や運用マニュアルを整備しておくことが欠かせません。リスク対応
自作システムは検証体制が十分でないことが多く、設計ミスや運用中のエラーによってデータが消失・破損する可能性があります。これを防ぐため、段階的なテスト運用が不可欠です。また、災害やトラブル発生時に備えて、クラウド環境の活用や外部サーバーへのバックアップ、アクセス制限といったセキュリティ対策も講じましょう。
ベンダーのシステムも検討する
自社開発には多くのメリットがありますが、労力や専門知識、長期的なメンテナンス体制を確保できない場合は、無理に自作にこだわるよりも、信頼性の高いベンダー製品を導入する方がリスクを避けられます。必要最低限の機能に絞って製品を選べば、無駄を省いた導入も可能です。自作にこだわるあまり、ベンダーのシステムを最初から排除するのではなく、選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。
