
生産計画は、単にスケジュールを組むだけでなく、設備や人員、材料といったリソースを考慮して実行しなければならない、戦略的な業務です。しかし、実際には計画どおりにいかないケースも多く、計画の柔軟性と再調整のしやすさも重要です。この記事では、生産計画や立案方法、成功させるためのポイントについて解説します。
生産計画とは?種類と役割をわかりやすく解説
製造効率化を図るうえで欠かせないのが、生産計画です。単に製品を作る順番を決めるだけでなく、資金や人員の配分にも深く関わる重要な業務です。生産計画立案のために、まず生産計画についての基本的な部分を知っておきましょう。生産計画とは
生産計画とは、どの製品を「いつ」「どれだけ作るか」「いつ出荷するか」を決定することを指します。たとえば、1,000台の製品を製造・納品する必要があるとしたら、それに合わせて各工程の作業内容やスケジュール、必要な資材や人員の確保を実施します。生産計画を立てずに行き当たりばったりで製造を進めてしまうと、従業員や設備を確保できず、製造が非効率になったり、在庫の過不足が生じたりするでしょう。生産計画をしっかりと立てることで、製造現場が混乱することなくスムーズに稼働し、納期遅延なども防ぎやすいのがメリットです。
生産計画の種類
生産計画の立案には「押し出し方式」と「引っ張り方式」があります。押し出し方式は、あらかじめ計画を立てて、その計画どおりに生産を進めていく方法です。あらかじめ決まったスケジュールで進行するため、全体の流れが把握しやすく、作業が進めやすいという利点があります。しかし、途中で需要が変化した場合に柔軟な対応がむずかしいというリスクもあります。引っ張り方式は、受注量や納期などの実際の需要にもとづいて、生産工程を逆算する方法です。過剰な在庫を抱えにくいのが特徴ですが、受注や市場の動向を正確に把握する情報管理体制が求められます。
計画期間別の特徴
生産計画は、計画スパンに応じて大日程計画、中日程計画、小日程計画に分けられます。大日程計画は、6か月から1年といった長期間を対象とした生産計画です。続いて中日程計画は、1か月から3か月先の生産を見越して、より具体的な内容を決めていく段階です。小日程計画は、実際の生産現場での詳細なスケジュールであり、1週間から1か月程度で計画します。どのラインで、どの順番で、どの作業者がどの工程を担当するか、さらには金型や治工具の交換タイミングまで細かく設定します。
生産計画の立案方法と押さえるべきステップ
生産計画を立案するには、製品の納期や資材の調達状況、設備の稼働能力、人員の配置など、多くの要素を総合的に見極める力が求められます。ここでは、生産計画の立て方と押さえるべきポイントについて解説します。何をどれだけ作るか
まず、生産計画の基本となるのは「何を」「どれだけ」「いつまでに」です。これを踏まえたうえで、「どの生産ラインで」「どのタイミングで」「どのような順序で」生産を進めるかを検討します。その際、使用する部品や原材料、作業工程の所要時間、製品の在庫状況なども考慮する必要があります。これらの検討を進めるには「生産」「販売」「在庫」を連動させて考える「生販在計画」の立案が欠かせません。
生販在計画の立案を、半年から1年を対象とした大日程計画、そして1か月から3か月を対象とした中日程計画に落とし込みます。
生産能力を把握しておく
自社の設備や人員体制をもとに、想定される生産量に対応できるかどうかを検討します。もし現状の体制で間に合わない場合は、生産の前倒しや在庫の積み増し、外注活用、残業の導入などといった対策が必要です。そのために、「4M」と呼ばれるリソース管理が大きなカギを握ります。4Mとは「Man(人)」「Machine(設備)」「Method(手順)」「Material(材料)」を意味し、これらを適切に管理しておくことで、計画の実現性と精度が高まります。
生産計画を成功させるためのポイントと注意点
生産計画を成功に導くには、どのような点が重要なのでしょうか。ここでは、現場で実践できる具体的なポイントと注意点について解説します。リソースとバッファ確保
まず、生産計画を立てる際に欠かせないのが、適切なリソースの確保と、余裕をもった計画にすることです。4Mをしっかりと考慮した生産計画になっていないと、時間はあるのに生産できない手待ち時間が発生してしまい、大変非効率です。さらに、生産現場では突発的な設備の不具合や部品の納入遅延、人手不足など、予測しきれないトラブルが日常的に起こります。こうした状況に柔軟に対応するためには、スケジュールにバッファを設けておくことが重要です。
余裕があればリソースを確保しやすく、作業の遅延にも柔軟に対応できるため、納期を守るための調整もしやすくなるでしょう。